実  生  法 

新しい品種を得るために実生を行います。近年各地で多くの人が試み、たくさんの品種が世に出ています。特に数年前からは加茂花菖蒲園で大量の八重咲種が発表され、大きな話題となりました。
目標 まずどんな花を作りたいか、その狙いをはっきりさせます。ただ漠然と種をまいていたのでは、良いものは出ないようです。そこでよい親選びが大事になります。種子は手間のかかる交配によるよりも自然にできたもので十分です。ただ近年、虫の飛来が少なく、結実率がかなり低下しています。
採種 受精して子房が充実するのは六月中旬ですが、放っておくと子房外皮の腹が割けて種が飛び出します。子房が少し色付いたころ、茎ごと折取り、種を取り出します。種皮が緑色をしていても大丈夫です。そして、多品種少量づつよりも、少ない品種で多くの種を蒔くほうがいいようです。
播種 桜草の種は寒さに会わないと発芽しません。そこで、休眠を打破する市販のホルモン剤ジベレリンを使います。この薬の300ppm溶液(濃度にはあまりこだわらなくてもいいようです)に一昼夜浸漬後に蒔きます。用土は市販の種蒔き用(ピートパン)を使うか、ピートモスに小砂を混ぜてつくります。かたまらないように出来るだけ薄めに蒔きます。覆土はしません。直射日光を避けて乾かないように管理します。
植替 8月に入り、芽生えて40日目頃には、苗は本葉2〜3枚になります。これを1本ごとに7pぐらいのポットに、根を切らないように丁寧に植付けます。この時、元気で大きな芽を選び、小さく弱々しいものは捨ててしまいます。小さなものが大きく育つことはまずありません。
乾燥しないように、明るい日影で肥培します。秋の終わりには擬宝珠状の丸い芽ができています。
選抜 翌年には大半が咲きます。親に似たもの、親に似ない鬼っ子など様々です。自ら作りだしたものは捨てがたいものですが、ここで大ナタを振るって選別します。その基本条件は、
             ・丈夫で育てやすいこと
             ・よく増えること
             ・茎がしっかり立つこと
             ・花数の多いもの
でなければなりません。その上で、今までにない花色・花型など少しでも良いと思う点があれば残します。さらに翌年、より厳密に類花のあるものを淘汰します。百に一つも残りません。古典銘花を越えるのは至難のことです。
倍数体 実生によって時に3倍体が出現します。全体に大柄で丈夫です。その実生によるとわかっている最初のものが中村長次郎氏の「天女」です。4倍体は芽変りで生まれると言われますが、コルヒチンを幼芽に作用させて作ることができます。平尾秀一氏の「テトラ」がそうです。
命名 新しい品種と見極めがつけば、名前をつけて外に出すことになります。この時、名前の重複を避けるため、浪華さくらそう会発行の『日本桜草品種総銘鑑稿』−約2000弱の品種名をあげてあります−を利用します。その花にぴったりの名前を考えるのも楽しいものです。
   


毎年各地で桜草の展示が行われています。一度足を運ばれて、その花の美しさに直接触れてみてください。その上で桜草を作ってみたいと思う方は、事務局に連絡されるとよいでしょう。
              ※参考文献…鈴鹿冬三著『日本サクラソウ』NHK出版